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◆津軽海峡にて (2016/7/14 19:37:51)
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久しぶりの不定期連載、今回は藤沼さんのご登場です。
我々もいつ遭遇するかもわからないWXのトラブル。
体験談を通じてぜひ自分のフライトに活かしたいですね。
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こんにちわ。藤沼です。
今回は藤沼の恥ずかしい体験談を一つ。
今から約10年前、教育証明を取得して半年ほど経った時にJMGCで東北合宿しよう、との話になりました。
今にして思えば、ちょっと練習生より飛行経歴が長いだけでベテランパイロットのような気持ちがあったのかもしれません。
東北合宿への参加は一足遅れ。先発隊は天気に恵まれ、前日までにやれ函館だ、旭川だと
北海道まで足を運ぶフライトを楽しんでいるとの情報が入っていました。
私は一人エアラインで青森空港に行き、そこで先発隊に合流することになっていました。
予定通り青森空港到着ロビーで先発隊と合流、その足でCABにフライトプラン提出。青森市内のシーリングは2200ftぐらい。
練習生の方とウキウキと青森を離陸、函館に向かいました。
まずは陸奥湾を北に向かい夏泊を目指しましたが、青森湾辺りからいきなりシーリングが下がり1500ftでの巡航を強いられます。
取りあえず下北半島にはたどり着いたものの、今度は弱い降雨。ついに1500ftすら維持できなくなってきました。
函館のATISはBKN025,FEW010,Visi10km、RAのアナウンスはありません。
北からの雨雲が恐山に当たって留まるようで雨と共に霧が濃くなってきます。
函館まで30NM、約30分、津軽海峡を1000ftで突っ切る勇気はなく、ここで函館は断念。
さて、青森に戻ろうと180度変針。New Chitose InfoにコンタクトしてDest. Changeを伝える。
先ほどより更にシーリングは下がってきました。陸奥湾は薄暗く、降雨。
幸いにも津軽半島は明るいので、津軽半島から海岸線を南下して青森に戻ることにしました。
ところが、実際に津軽半島にたどり着いてみると明るいけど真っ白になってます。アッという間に
陸地が霞み、キャノピーに雨滴が。雲に入ってはまずいと、雨のないところまで戻る。
平舘海峡上空1000ftで青森VORに乗って青森空港を目指そうとするが、こちらもシーリングが
下がり、雨が小降り。
さてさて函館にも行けず、青森にも戻れず、どうしたらよいのだろう。
津軽半島よりは下北半島の方が雲が高く、雨も弱そうなのでまずは下北半島に。
さて、どうするか。
1)雨が降っているけど函館を目指す
2)暗いけど青森を目指す
3)自衛隊大湊にエマを宣言する
再度周囲を見回すが1)、2)は無理と判断。
下北半島の真ん中あたりにある自衛隊大湊基地付近は明るい。
燃料、高度も余裕があるがエマージェンシーを宣言することを決断。
大湊TWRにコンタクトして、天候不良に伴いエマージェンシーを宣言し、
ランディングを要求。TWRから搭乗員、残燃料、機体の不調有無などの
確認を求められながら、大湊に向かう。
途中でTWRから「Confirm declare Emergency?」と確認されました。
もちろん「Declare Emergency」。大湊付近は明るく、降雨もない。
シーリングも2000ft以上。ただ、R/W22に対して風が北寄り280/20kt程度。
取り敢えず細かいことは降りてから考える、、と言うことでアプローチ。
タッチダウン、タクシーしてスポットイン。ふーーっ。一息。
消防車や消火器を持った自衛隊の方々などぞろぞろといらっしゃる。
機体から降りると、チョークを入れてくれます。
私達は基地内に案内されましたが、自衛官からは「写真撮影や、この場から
動くことはしないように。外部への連絡も行わないように。」と指示されます。
その後、自衛隊の上官の方々と面談。「何故、うちに降りたんですか??
R/W600mなのは知っていたか?給油は出来ないがこれからどうするつもりか。」と
質問攻め。
結果オーライではありますが、何処まで熟考していたかは反省です。
監理官からはエマージェンシーなので着陸料や格納庫、夜間設備も使っていないので
債務は発生しないとの説明いただきました。
11:30頃になって大湊では薄日が射し、青森のWXはVMC。もちろん花巻など南は大丈夫そうなWX。
取り敢えず下北半島の湾沿いから野辺地経由で青森に向かって出発することにして
プランを入れ、離陸12:20。
真っ暗だった青森(夏泊)が見え、TWRにルートチェンジを伝えてダイレクト夏泊に変更。
Visiはよいが雲は低い。夏泊半島の山頂は雲の中。1000ftぐらいで所々雲を避けながら青森に。
青森空港ELV 650ft。本当は1600ftぐらい欲しいが上がれない。1000ftを維持。幸いR/W24。
青森市内上空からそのままベースに向かいます。TWRから飛行場が見えるか聞いてくるし、
アプローチライト点灯とも言ってくれます。
アプローチライトの上を1000ftで通過、最後にスポイラー全開で着陸。
13:05。無事青森に戻る。
当日の航跡
いっぱい反省がありますが、その中のいくつかを。
●出発前の天候調査、コースの検討が十分だったか
初めての土地で、しかも海、海峡、山に面しているような普段経験しない気象エリアのFLTならば慎重にWXを確認するべきであったでしょう。
●大湊にエマを出す前に他の選択肢はなかったか
安易なエマではなかったか)
単純にRJSA-RJCHを直線で結んだコースしか頭に浮かべず、迂回コース
やダイバージョンを考慮していなかった自分を反省します。
●エマを発出する前にAEISやTWRにコンタクトすれば良かった
これは不要不急のSARを動かさないため、関係者への配慮として必要。
こんな私の経験が皆さんの参考になれば幸いです。
最後になりますが、当日お騒がせした海上自衛隊大湊航空基地の皆様に御礼申し上げます。
<編者あとがき>
いやはや、できればこんな経験はせずにいたいものですよね。
ただ、色々反省はあったとしても・・・反省できるのは無事だったから。なにより無事が大切です。
基地の方には迷惑かけちゃいましたが、ここはやっぱり降りちゃって正解だった、ということになると思うのです。この時の藤沼さんは、
・ 低視程だから引き返す
・状況を観察し、エマーを宣言する
・降りられる場所には降りる
これらを果敢に決断し、ブレずに実行したことが結果につながったのではないでしょうか。
もちろん、他の選択肢も可能性もあったでしょう。でも、そのうち幾つかは、望まぬ結末だったかもしれません。
結果オーライ。上等じゃないでしょうか!
それでは、次回もお楽しみに。
<おわり>