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feed どんな形の飛行機でも飛ぶんです! その13 (2017/3/11 11:05:54)
今回は、変わった形の飛行機をご紹介するのではなく、変わった翼の構造の飛行機をご紹介いたします!



変わった構造の翼のご紹介をする前に…。

まずは、飛行機の翼の進化についてご説明いたします。

…が。

その前に、その構造の意味を理解しやすくするために、まずは飛行中の飛行機の翼には、どのような力が加わっているかをご説明します。



上の図は飛行機の飛行中にかかりうる力を説明していますが、

はっきり言って、上下、前後、そして、ねじれの力など、すべてと言っていいほどあらゆる方向の力が加わります。

飛行機の翼は、このあらゆる方向の力すべてに十分に耐えられるよう、尚且つ、それでいてできるだけ軽いことが望まれる、非常に設計の難しいものです。

そのため、その時代の材料や工作技術、そして、空力的に求められる形状などで、多くの翼の構造が存在しています。



初期のころの飛行機は、木の桁を翼に通し、それを中心にして、ワイヤーを使ってあらゆる方向から加わる力に耐えられる構造のものでした。

少し時代が進み、翼を複葉とすることにより、更に大きな力に耐えられる構造の翼が主流となります。

この時代もまだワイヤーが使用され、翼にかかるあらゆる力に耐えられるようにしていました。



更に時代が進み、飛行機が高速化してくると、複葉のワイヤー張りの構造では空気抵抗が無視できなくなり、単葉機が作られるようになります。

単葉機が作られるようになった理由は、アルミ合金に品質の高いものが現われたことです。

今までのように木材に頼らなくても、強度の高いアルミ材があったため、より空気抵抗の少ない単葉機が作られるようになります。

しかし…。

アルミ合金を使用しているといっても、ありとあらゆる方向の力がかかる飛行機の翼を形作るには、それなりにその構造に工夫が必要でした。



まずは羽布張り2本桁構造。

比較的簡素に作れますが、風圧中心位置が移動すると、片方の桁に大きな力がかかるため、その強度にマージンが必要でした。

極端な話、例えば風圧中心位置が前の桁の位置にまで移動したとすると、前の桁だけで翼に発生する揚力を支えなければならず、更に風圧中心位置が前に移動したとすると…。

前の桁にはてこの原理で、揚力よりも大きな力がかかり得る構造でした。

そのため、ねじれの力はトーションボックスという箱構造で受け持つ構造が考案されました。

これが2本桁構造です。

この構造で、より効率よくねじれの力や他の力に耐えられるようになりました。

だいたいこのころ、同じくねじれの力や他の力に耐えられるように、単桁構造も考案されました。

これは、翼の前縁の形になるようにDの字型のボックス構造を用い、上記の力に耐えられる翼が作られたものです。

だいたいこの辺の技術が使われたのは第二次大戦のころ…。

旧海軍の名機とうたわれたゼロ戦。零式艦上戦闘機は、上記の2本桁構造が用いられ、イギリスの当時の代表的戦闘機「スピットファイヤー」

や、同じくドイツの代表的戦闘機「メッサーシュミットBf109」などは単桁構造が使われていました。

このころから、実は「新しい発想」が生まれ始めます。

ちょうど同じころ、層流翼の発想が生まれたのです。

この層流翼とは翼の断面形を形作る翼型の一種で、簡単にいうと翼を流れる空気を、なるべく乱れなく美しく流れる範囲をできるだけ多くすることにより、空気抵抗を少なくするという発想のものでしたが、

非常に神経質な翼になり、ちょっとした凸凹で、かえって空気抵抗が増えてしまう欠点がありました。

そのため、当時の工作技術では難しく、あまり積極的には使われていませんでした。

上記にご紹介したゼロ戦も、軽量化に走るあまり、翼の外板が薄くなり、凸凹ができて高速時の空気抵抗が大きくなり、大戦後期ではその性能に行き詰まりが生じてしまいました。

ゼロ戦の後継機として作られた「烈風」も、工作技術の問題で一部にしか層流翼が使われませんでした。

しかし…。

アメリカで、わざと重量が増えることを承知のうえで、柔らかく厚い外板を使い、積極的に層流翼を用いた名機が生まれます。

P-51ムスタングです。

ムスタングはその高速性能で、量産された第二次大戦の戦闘機としては最強といわれる飛行機となりました。

戦争が終わり、飛行機はいよいよジェット化していきます。

こうなると、ますます翼に要求される性能は厳しくなってきます。

プロペラ機の時代よりも更に大きな力に耐えなければならず、しかも、空気抵抗を少なくするために、翼を薄くすることが要求されたからです。

そんな中で、より効率の良い翼の構造が考えられるようになったのですが、その中で生まれたのが、マルチストリンガ構造と厚板外

板多桁構造です。



翼にかかる力は、なるべく翼の外板で受け持つほうが効率が良く、そのため、外板自体に翼にかかる力のほぼ全部を受け持たせるという構造です。

飛行機の高速化でもともと外板の厚みが増していたこと、並びに、上記の層流翼の発想などもあり、コンピュータ制御の工作機械で正確に翼の

外板を削り出せる技術の成功が後押しし、戦闘機や旅客機の翼の構造はほとんどこの構造に取って代わりま

す。

それまでのようにアルミの「板」を曲げて翼に張り付けるのではなく、大きなアルミの「ブロック」を、工作機械で削って曲線をつくり、翼の

外板を作るのです。

この方法はその後の旅客機や戦闘機の翼の構造の主流となり、材料がカーボンに変わりながらも現在に受け継がれています。



前置きの翼の構造の進化の説明が長くなってしまいましたが…。

さて、これからが本題です!

飛行機の翼の構造の進化は上のような形で進んだ訳ですが、

要は翼の外皮で力を受け持つ構造が理想とされているわけです!

で…。

実は、私は40年ほど前、私がまだ中学生だったころ、素晴らしい模型飛行機の翼の構造と出会い感動したこ

とがあるんです。

それは、今ではほとんど見なくなったUコンという模型飛行機(余談ですが、鳥人間大会でいつもプラットフォームで機

体の最終検査をしている佐々木正司氏は、このUコンの達人でもあるのです。)の曲技飛行機で用いられていたものなんですが、

なんと、外皮に貼られた「紙」で翼にかかる力を受け持つ構造の機体だったのです。

模型飛行機といっても、そのエンジンの出力は人間一人分に相当していました。

そのような力の一部を「紙」で受け持っていたのです。



上の図がその模型飛行機の翼の構造です。

揚力については、中ほどにある2ミリバルサと、翼の下面に貼られた「紙」で支えられていました。

ねじりの力についてはほぼすべて「紙」。

翼の前後荷重についても前縁と後縁、それに「紙」で支えられているのです。

「紙」といっても、紙そのままではなく、ラッカーやドープといった塗料を何十回も塗り重ね、極薄のプラスチックのような状態になっていま

した。

この構造で、人一人分の馬力を持つエンジンのパワーを十分に受けとめていたのです。

これは私も子供ながら感動してしまいました。

ご察しのように、この模型飛行機はとても軽量で、同クラスの機体に対し1.5倍ほどの翼面積を持っていたにもかかわらず、重量は対等…。

素晴らしい曲技性能を持っていたのです。

あえてこの機体の欠点をいうならば、機体製作時、翼に塗料を塗るときに、注意しないとねじれやすいことがあったでしょうか?

とにかく、とても軽く作れる構造でした。




さて、ここで私は思うのですが、人力飛行機にもこのような構造が応用できないものでしょうか?

現在の人力飛行機は、100パーセント、翼にかかる荷重はカーボン製の桁にかかることを前提に設計されています。

しかし、外皮の材質を、更に研究することにより、外皮そのものも強度を支える構造物として考えて、今以上に軽量化することも、或いは可能

なのではないか…。

そんなことを言いたかったので、今回このブログを書かせていただきました!

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