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link JA2339 JA2339 (2024/12/25 18:56:26)

feed フライト事始めは北海道神宮参拝から (2011/4/18 18:30:11)
e5c872b8.jpg 正月2日早朝。風はガスト(突風)をともない身を切るように冷たい。石狩湾で強い雪雲が発達しているのが気にかかるが、札幌の都心方向にかけては青空で視程もすこぶる良好。これならクラブ恒例の上空から「北海道神宮参詣」は可能だろう。
 クラブ員が徐々に集まりはじめた。とにかくこの寒さでクラブ室は冷蔵庫のようだ。どうせ寒いならばと、耐寒重装備で機体組立に格納庫へ向かった。
 強い風で飛行場のソック(吹き流し)はほぼ水平に寝ている。場内を見渡してもYS-11が運行しているだけで、自衛隊機はもちろん駐機場には他の航空機が1機たりとも見えない。要するに空港貸し切り状態。我がクラブのために運用してくれているようなものだ。
 この寒さにかかわらず、エンジンは一発でブルン。入念にエンジンを暖めた後、S・Sチームが新年初のローカルフライトにでることになった。もちろん、正月恒例の北海道神宮参拝は思いつきではなく想定内の行動。ラジオ(航空無線)を聞いていると、タワーとの交信でそのS訓練生の声。
「サッポロタワー、2339(トウ・スリー・スリー・ナイナー)、今年もよろしくお願いします」
お正月だなー。我々もタワーに「謹賀新年!」とか言ってみようか知らん。

     --上空からの神宮参拝は、完璧なランディングで無事終了--

 彼らのフライト終了に続くフライト2番手は、われわれGod・city1のチーム。ところが駐機場が薄氷で覆われているため、機体を地上回頭させるのも足下が滑ってままならない。こういう場合、エンジンをかけた途端に前方へ滑り出しなす術無くなるから冬は怖い。誘導路も飛行場内の乾いた雪が吹き込み圧雪の滑りやすい状態。タキシング中は強い横風を受ける。ときどきパワーを開いてラダーに強いプロペラ後流をあてながら直進しなければならない。
 ランウエイ上に吹き込んだ粉雪を蹴散らすように滑走を開始。引き起こしのタイミングを失するほどに、いくらも滑走しないうちに離陸した。(引き起こしが早すぎたかも)
 ランウエイは14。機体の動揺をなだめながら高度500ftで機首を左へ振る。上昇しながら北海道神宮のある円山をめざした。視程良好。眼下に北海道大学の農場、札幌競馬場が拡がる。遠くには真っ白な屏風を幾重にも立てかけたように寒々しい峰峰が重畳する。こうも寒いと、空冷式の暖房システムはいささか心許ない。上昇とともに足もとが冷えてくる。かつてのフォルクスワーゲンヤパブリカ(古い)はこうであったか。それよりも飛行場の気象変化が気にかかる。あの海上の雪雲が飛行場に覆い被さるのは一瞬であり、しかも一度飛行場を覆ったら回復の保証はない。室内にバックミラーが是非ほしい。
 円山の山すそに北海道神宮が見え出した。と、GodKはマジな顔つきでかしわ手を打つ。いわゆるGod対Godの勝負(この意味わかる?)。
 青空のもと、中年の頭頂部のごとく、葉を落とした梢のすき間から人波がまさに波のようにうごめいているのが見える。その上空をゆっくりと右へ緩い一旋転。そして左へ一旋転。上空からお詣りとは不敬な、との指摘もあろうが、乗馬をやっている者は馬で、飛行機をやっているものは飛行機で神社にお詣りにでかけるのは理にかなった行動様式ではある。現に周辺の道路は、自動車をやっている人たちが自動車で北海道神宮を目指し、その列は道路を埋めている。しかし、固まったように動かない。『先頭車はなにをしている!』の気分だろう。
「ユー・ハブ」
 今度は右席のGodと操縦を替わった。丘珠方面の雪雲の動きに変化のないことを確認して、羊ヶ丘から大曲へ。タワーへもインテンションを通知。帰路は北海道百年祈念塔から江別を経てGodの自宅上空を数旋転。そしてマイクを取り、ランウエイ32への進入をタワーに要求した。数マイル先の滑走路に向けてのストレート・イン(直線進入)は、飛行場を独り占めしたかのような錯覚さえ覚える。まさにパイロットだけが味わえる至福の瞬間だ。意識は着陸のみに向けられ、軽いエンジン音と風切音だけが支配する静寂の世界だ。
 雪で覆われた滑走路への着陸は、巧みな操作ゆえか、はたまた粉雪が幸いしたのか、機軸の修正ミスを繕うように、左右に跳ねもせず、接地のショックもなく教科書どおり完璧に滑り込んだ。

     --春のフライトシーズンはもうすぐ!--

 ここ北海道は1、2月が本格的な冬の季節だ。一方、日没時刻は、新年を迎えると日に日に遅くなる。そして2月初頭のさっぽろ雪まつりが終われば日差しは一気に強くなる。あとは本格的な春のフライトシーズンを待つばかりだ。
 太陽は西に傾き、機体は鶏小屋のひよこのように他の航空機とともに格納庫隅に片づけられた。
狭いクラブ室では、膝すりよせて、紙コップの冷えたコーヒーをすすりながら、フライト談義が遅くまで続いていた。(灯台守)

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