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けいぶん・増井プロのRJAFフライト記 (2017/3/29 20:14:08)
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既報のとおり、3/11の土曜日に松本を往復したけいぶん・増井両氏からフライト記を頂きました。
それでは、どうぞ!
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◆けいぶん氏の松本フライトレポート
予報天気図とにらめっこ・・・
高気圧が関東甲信越に張り出してくる・・・
こんな気圧配置で飛ばない訳には参りません(笑)
行くなら「北アルプス」っしょ!
って事で土曜日は8:30に飛行場へGo!
まずは松本空港のPPRを取ります。
電話をすると管理事務所の方からヘリの運用があるので係留をする様にとの事・・・
係留ロープを持参しましょう。
さて、経路ですが大利根飛行場から松本空港へは
①都内~笹子峠(3,596ft)~甲府~塩尻峠(3,461ft)の中央道ルート
②熊谷~碓氷峠(3,149ft)~佐久平~上田の北陸新幹線ルート
とかがありますが、今回は熊谷~荒船山(4,669ft)~佐久平~美ヶ原(6,674ft)としました。
②のルートも今回のルートも自衛隊高高度訓練空域のAreaHを通過するので事前に調整が必要になります。
AreaHの場合は航空自衛隊第2輸送航空隊(2nd Tactical Airlift Wing)に電話をして調整してもらいます。
必要に応じて"OFF SIDE"124.9MHzと交信する様に言われます。
さて、お次は機体の準備です。撮影窓があるJA09AWにしよう(笑)
最大離陸重量を考慮しつつ燃料を補給(笑)
フライトプランは最近クラブに導入されたSATシステムを使用してネット環境でファイルします。
これ便利っすね!
◆いよいよ出発〜
なんだかんだで離陸は10:30になりました。往路は増井機長です。
同じ時間に離陸したJA2351とJA172Jは竜ヶ崎市街でミッションフライトを実施しております。
往路の関東平野はなるべく高度を上げず東風を使いGSを稼ぐ作戦です。関宿のグライダーも好調の様子。
関宿~熊谷は強烈な上昇風を速度に転じてGSはウハウハ!良い積雲があってグライダー天国でしょう!
熊谷上空で東京INF熊谷サイトに位置通報をします。この位置情報はSATシステムでJMGCの端末にも表示されるのでクラブハウスで当機の動向が把握できます(悪い事は出来ない!)
(しかし、くまがやドームは目立ちますね!関宿あたりから視認できます。ナビゲーションの良い目印です!)
熊谷を過ぎて伊勢崎に差し掛かる付近から地上がせりあがって来ます(笑)
数年前に愛さんとJA21HEで訪問した伊勢崎の飛行場を上空から眺めつつ荒船山を目指します。
伊勢崎の飛行場
途中、北陸新幹線に抜かれるのは足の遅いモグラの哀しさですね~
荒船山は標高4,669ftですが特徴ある形をしています(日本のギアナ高原!)
荒船山
噴煙を上げる浅間山
妙義山のトゲトゲや浅間山の噴煙を眺めながら上昇域を見つけて高度を上げて行きますが同時にGS(対地速度)も下がって行きます。
特に荒船山付近は風が収束していてGSがかなり悲しい事に・・・・
特徴ある荒船山を越え、佐久平に入りました。ありゃ・・・思いのほか空気が湿っているのかな?
北アルプスは雲の彼方へ・・・(泣)
上田に回り込み松本へ向かうのはちょっと、距離がありますね!
雲が多いですが美ヶ原高原を目指しましょう。蓼科山(8,301ft)の北斜面で上昇風を探して高度を稼ぎます。
美ヶ原高原を超えるにはできれば8,000ft欲しいですね(笑)
雪に覆われた美ヶ原高原美術館を眺めながら松本に向かいますが、ここで松本RDOと通信設定します。
ありゃ!定期便の出発と到着にモロに被ります・・・フライト代金が・・・(泣)
RDOから5NM以遠で待機を指示されます。この場所は気流が悪くて嫌だな~と思いながら定期便の出発と到着を待ちます。
出発はRWY36で到着はRWY18の様です。到着機は塩尻からレフトダウィンウィンドRWY18ですね!・・・ってこっちに来るのか!
でもこっちは8,000ftだから無問題! 出発機の離陸に続き、到着機は眼下を通過して行きます。
RDOに到着機視認を伝えるとRWY36のライトダウンウィンドへのアプローチを指示されます。
ダイブ全開で美ヶ原高原上空から、よもぎこば林道上空を松本空港へアプローチするのは滑空機かヘリコプターにしか出来ない芸当でしょう(笑)
RWY36のダウンウィンドに入ります。そうそう、初めて行く人は高度に注意していてね!頭では松本空港の標高を判っていてもトラフィックパターンで900ft(MSL)目指して地面に潜ろうとする人がいますから(誰とは言わないが!)
松本空港ファイナル
ってな訳で無事に松本空港に到着。なんと1+50もかかってしまいました・・・・とほほ!
◆無事に松本へ到着
スポットに入ると丁度、県警ヘリが離陸するところでした。翼端を持ち、強力なダウンウォッシュに備えます。
係留ロープでタイダウンして管理事務所に行き手続きをしてからターミナルのレストランで昼ごはんです。
とんかつラーメンと天麩羅そばがお勧めです。(天麩羅そばには林檎の天麩羅が!)
レストランの従業員さんは飛行機好きで写真が店内に飾ってありますが・・・・G109Bが無い!
今度、撮影して飾っておいて下さい!
昼飯後、観天望気の為に送迎デッキへ・・・北アルプスは雲の彼方です(泣)
乗鞍岳は見えていますので乗鞍岳を目指しましょう。帰り道に北岳かな?
って訳で、復路のプランは乗鞍岳(9,928ft)~北岳(10,473ft)~甲府~新宿。所要時間は2+30としました。
◆ 帰路も山巡りで
エプロンに出て飛行前点検をして機体に乗り込みます。復路は私がPIC。
松本空港RWY36で離陸。10KTの向かい風で気持ち良く上昇します。
安全高度に達したのち左に旋回して乗鞍岳を目指します。丁度、梓川の渓谷を目指す感じですが立派なV字渓谷の梓川は初めて行った時は当然、回れ右しました(だって怖いもん・・・笑)
何度かそんな経験を経て、登れる場所が判ってくると、面白いですよね!
もちろん、ちゃんと退路を確保して進みましょう。無理は絶対にダメです。
梓川沿いを乗鞍方面に向かうと渓谷ななって行きます。渓谷の南側の斜面を利用して高度を稼ぎますが今日は思うように上がりません。いつもより多く回っております(笑)
眼下に松本電鉄の新島島駅が見えます。上高地に行くときはここで乗り換えですね!
更に梓川を遡ると奈川渡ダムが見えます。ここが上高地への正面玄関ですね!
高度は7,000ftを超えました。ここまでくると目の前の乗鞍岳や遠く御嶽山が良く見えます。
残念ながら今日は穂高や槍は雲があって見えません(泣)
奈川渡~乗鞍高原にかけては、ほとんど風を感じる事はありませんでしたが、乗鞍岳周辺にまとわりつく雲を見ると西風かな?普段は安房峠を超えて乗鞍岳の西側や上高地方面に飛ぶのですが、今日は雲が行く手を
阻んでいます。南側に上昇域があったので数旋転して高度を11,500ftまで上げて乗鞍岳に挑みますが・・・
なんか、嫌な気流を感じます。高度によって明らかに風向が違います。
この高度まで上がると、穂高~槍ヶ岳が綺麗に見渡せましたが、嫌な感じがするので(空気の感じが)
今日は乗鞍岳を愛でて退散しましょう(笑)
乗鞍岳その2
乗鞍岳スカイラインが自家用車通行禁止になるまで、毎年天体観測に行っていたし、コロナ天文台も宇宙線研究所も見学した事があるので、乗鞍岳に愛着があります(笑)
一通り、遊覧したので北岳に一直線・・・・とはいかず、少し風下を避けて南側に回り込んで東進開始です。
松本空港の南西10NMで位置通報して更に進みます。眼下の諏訪湖が綺麗だなぁ~!
しかし、今日はいつもよりGSが出ない・・・いつもなら120KT以上で快速なのですが、今日は
90KT・・・
え?TASも90KT??無風?そんな馬鹿な!
北岳が綺麗ですが既に1時間も飛んじゃっているので、今日はパスして早く帰ろう!
9,500ftで甲府を目指します。眼下に双葉の航空学園やサントリーの白州蒸留所も見えますね!
甲府から笹子峠方面をみると峠の向こう側には雲がびっしり・・・・
上昇すれば飛び越えられそうかな?
一応、成田や羽田の天気をモニターすると良い天気・・・
でも、地上は東風だなぁ・・・
巡航高度の11,500ftに向かって巡航上昇を続けますが・・・
右席の増井君が「なんで降下すんの?」って聞かれて高度計と昇降計を再確認
ちゃんと上昇しているよなぁ?もしや低酸素症?
増井君に高度計と昇降計を確認してもらって、納得してもらいましたが、これが低酸素症です!
怖いですね~!
サーキュラTCM-50-004C-5-86「飛行規程の作成および取扱要領より『高高度を飛行する場合には、次の容量を有する酸素供給装置を装備しなければならない。
イ) 3.000mから4.0000mまでの高度で飛行する場合は、当該飛行にかかる飛行時間から30分を減じた飛行時間中、搭乗者が必要とする量
ロ) 4.000mを越える高度で飛行する場合は、当該飛行にかかる時間中搭乗者が必要とする量』
と言う事ですね!10,000ft=3000mではありませんよ! 3,000mは9,842ftですよ!
◆最後は大慌て
と、言う事で無事に関東平野の西端まで来たし、低酸素症も怖いので雲を避けて降下を開始しますが、
キャノピーに雪の結晶がぶつかり出します!え~っ!今度は雪かよ!
視程は良く50km以上は見えていますが、雪にはビックリです。
右席の増井君が今度は「トイレ行きたい!」
えっ!あと50分位かかるよ・・・・
「・・・・・」
「ぢゃこのまま、ファイナルグライドで大利根へ向かおう」
横田APPにレーダーモニターをしてもらいながら巡航降下で大利根に直行しますが無情にも高度を落とすにつれ東風の影響がGSに表れ始めます・・・
なるべく高度を落とさず対地速度を維持したまま・・・・
「我慢できる?」
「膀胱が破裂しそう」
横田APPから東京TCAに移り更に巡航降下しながら大利根を目指しますが目の前に東京PCAが立ちふさがります・・・
ならば、PCAを通過しよう・・・
「東京TCA、JA09AWです。このまま東京PCAをクロスしたいと思いますが如何でしょうか?」
「JA09AW、東京TCAです。支障ありません。クリヤードクロスPCA」
下総基地の管制圏の南側半分の上空は東京PCAですが、ここを許可を受けて通過します。
ここまで来れば、あと少しです。
東京TCAを離れ、大利根フライトサービスを聴くと、このままロングファイナルでRWY07に着陸できそうです。IAS200km/hのまま降下します。
ロングファイナルに入り、あと少しです・・・
「ソフトランディングで宜しくお願いします」
「りょ・・・了解]・・・・緊張するなぁ~でも、どん着してショックで破裂したら大
惨事だ!
・・・・んで、緊張のあまりフレア操作を誤り、浮き上がってしまいました。
「ゴーアランド!」
「えっ!そんなああぁぁ ぁぁ 」
無情にもゴーアランドするJA09AW
反射的にゴーランド操作が出来たのは訓練のおかげです(笑)
フライトサービスに事情を告げてショートパターンに入りなおして、今度はサイドアプローチで無事に着陸できました。
・・・ごめんねワザとぢゃないのよ!
機体が停止した後、増井君はきちんと安全確認をして機体後方通ってトイレに直行です!
さすが、さすがのエアマンシップですね!
復路の飛行時間は2+15でした
クラブハウスでSATシステムでJA09AWの動向を見ていた佐々木さんから松本空港から10NMになんで50分もかかるの?って聞かれましたが、「だって、そこに山があるんだもん」と答えておきました(笑)
と言う訳で、今回もロングナビゲーションを楽しませて頂きました。
皆さんもたまには、たまには関東平野を飛び出してみましょう!
最後になりましたが、長野県の消防防災ヘリコプターの事故に、心からお悔やみ申し上
げます。
(写真・文 けいぶん氏)