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feed フラットスピンからの復帰 (2018/1/20 9:55:12)
私は今まで数多くのハンググライダーのテストをしてきました。

メーカーさんのグライダー開発のお手伝いが主でしたが、中には雑誌のレポート記事の作成のためなどもありました。

そんなハンググライダーのテストは、どうしても危険を伴います。

だから、いつも私は慎重には慎重を重ね、それらのテストを進めてきました。

しかし…。

その中で、唯一、大きなミスをしでかしたことがあるんです。

それが、今回ご紹介するフラットスピンだったのです。

今回はそんな、唯一私がヤバい思いをしたお話をいたしましょう。


今から15年以上前のことです。

私は雑誌社のレポート作成の依頼を受け、当時最新型だった固定翼機のレポートを書くために、テスト飛行を行いました。

固定翼機とは、一般的なアルミパイプとセールで出来たハンググライダーとは違い、形は似通っているものの、その構造が飛行機と同じような機体のことです。

この最新型の固定翼機は、ある特徴を持っていました。

リトラクタブル フラップです。

通常、固定翼機にはフラップは常識的に付いていますが、この最新型固定翼機は、そのフラップが高速飛行時に翼内に収納することができたのです。

これにより、空気抵抗を少なくすることができ、より、高速での滑空が可能だったのです。



私はこの機体の性能を限界まで見てやろうと、飛び立った後、筑波山の上空まで移動。

そこで、筑波山山頂から安定して出るサーマル(上昇風)を使って、この機体の性能を繰り返し確かめ始めました。

最高速度、その時の安定度。低速性能。操縦性…。

雑誌のレポートとして不足のないように、あらゆるテストを繰り返していたのですが…。

最後に、完全失速にてどのような挙動が出るかテストしてみることにしました。

念のために、高度を海抜1500メートルまで上げて、まずは、軽く失速テスト…。

割と穏やかながらも、ちょっと気になる挙動が出ました。

少し、翼端の方が先に失速するような、翼が片翼だけ後ろに引っ張られるような挙動が出たのです。

「少しこの挙動気になるな…。もうちょっと掘り下げてテストしてやろう!」

そんな変な色気を出してしまい、今度は、この機体の特徴である「リトラクタブルフラップ」を、全部収納した状態で、完全失速に入れてみました。

それが大きな失敗だったのです。

風の音が消え、機速を失った機体は…。

翼端失速から、いきなり、フラットスピンに入ってしまったのです。

これはもう、かなり極端な入り方をしてしまいました。

スピン…。というよりは、いきなり左側の翼か無理やり後ろに引っ張られたというか…。

機体がグルグル回るというよりは、独楽のように機体の中心を軸としてそのままその場で回り始めたという感じでした。

非常に危険な状態です。

それまで経験したことのない、極端なフラットスピン…。



ヤバい!これは緊急パラシュートの射出か!?

と、思いましたが、ピッチの安定がわずかながら残っていることに気が付きました。

安定性がわずかながらも残っているということは、翼の一部はまだ揚力が生きているということです。

「これは何とかなるかもしれない…。」

そう思った私は、緊急パラシュートの射出をやめ、とりあえず回復動作を試みてみました。

フラットスピンの回復動作は…。

決して機体の回転を止めるようなあて舵はとってはいけない。

それと、

重心を前に保って静かに待つ。

最後に、

祈る!ことです。

私は上記のフラットスピン回復動作を試みて、最後は「頼む!直れ!!」と祈りました。

そうすると…。

機体は3回グルグルと回った後、機種を下に向けしばらくほぼ垂直に落下した後、バン!っと、いきなり回復したのです。

回復した瞬間、かなりのGを感じました。

…。

…。

心臓バクバクです。

時間にしたらわずかなものでしたが、高度計を見たら200m近く落下していました。

しばらくは放心状態で飛んでいましたが、とりあえず助かったようです!



コレが、唯一、私がヤバイことになってしまった事例です。


フライト後、私は自分の軽はずみな判断を、大いに反省しました。

そして、なぜ自分が危険なフラットスピンに入ってしまったのかを、考えてみたのです。


次回は、私自信の反省点について、並びに、ハンググライダーにとってとても危険な、この「フラットスピン」に入ってしまったらどうすべきかを、詳しく解説したいと思います。




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