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お別れ (2018/4/16 19:40:50)
先月までは、春なのに意外と安定した日和が続いた。
ここのところやっぱりこの季節らしく、日々目まぐるしく天気が変わる。暴風雨の翌日は穏やかな晴天だったり。
本当だったら土曜日は護国寺でお茶会だった。事情を先生に話し、欠席させて頂いた。
夜明け前から幾度となくチグラから出入りを繰り返す。
朝、トイレに行くとトラのトイレがあった場所におしっこがしてあった。体力を使うだろうとチグラの横にトイレは移動してあるのだが、もう目に入っていないのかもしれない。
これほど衰弱しているのにも関わらず、習慣でいつものトイレまで階段を上り下りしたことに改めて驚く。
パブロフの犬。いや猫なんだけど。長年の習慣なのだろう。本当に良い子だ。
暑くもなく寒くもなく、湿度も低い気持ちとは裏腹に清々しい朝だった。
日本動物高度医療センターには予約時間の30分前、10:00に着いた。ここへ来る動物たちはみな相当深刻なダメージがあるものばかり。
一通りの問診をして、その後MRIやレントゲン検査。16:30に今後の治療や対策を話しましょうとのことだったが、最終的には18:00過ぎまで待たされた。
多摩川に面しているこの病院の外では、北風を受けている堤防を使ってトンビやツバメがソアリングしている。
院内にはジブンら以外誰も残っていない。一番最後に呼び出され、ドクターの話しを聞く。
病名は喉の奥、舌の付け根にできた扁平上皮癌。進行がとても速く、悪性の腫瘍だ。ここまで悪化するのはあっという間だったとのことだ。
血液検査は老猫にもかかわらず、ほぼ正常な状態。
選択肢は3つ。
?対処療法
?胃ろうチューブの設置
?切除減容積
癌はかなり大きくなっているようで、呼吸ですら苦しい状態。
できれば切除してこれからさきの寿命が少しでも延びるのであれば、苦しくないようにしてあげたい。
しかしドクター曰く、舌の奥にできている場所で全摘出は不可能。進行がとても速いので3週間もすれば元の状態になってしまうとのことだ。
胃ろうチューブは望んでいない。麻酔のリスクはさておき、根本的な解決にはなにもならない。
残された対処療法は、抗炎症と鎮痛薬、皮下点滴を毎日することで、抗腫瘍効果を狙うもの。
2,3日で効果がでるとのことなので、対処療法をすることにした。
帰宅中、血管への点滴をしたせいか、少し元気を取り戻したようであったが、口から出血をした。ここまできて苦しい思いをさせて本当にごめん。
相変わらず呼吸が苦しいようで、息遣いが荒い。
夜中に水をシリンジからほんの少しだけ飲んでくれた。
土曜日の朝、突然トラの息が止まった。悶えている姿に焦り、背中を擦ると、大きく呼吸を取り戻した。
すぐに病院へ行くと、ドクターは姿を見るなり診察をしてくれた。
日本動物高度医療センターとは情報共有ができていて、まず癌を発見できなかったことを詫びた。
死にかかわることを話すことのなかったドクターは、「今日明日かもしれませんね」という。
残された時間をとにかく苦しくない対処をお願いし、皮下点滴と鎮痛薬の投与をしていただいた。
自宅へもどり、楽な姿勢になるよう横たえてみるものの、呼吸は苦しそうだ。
突然トラがまた悶え始めた。すぐに抱きかかえ、首回りをたたいてみたり、背中を擦ったりした。
20秒間くらいだろうか。
大きく息を吐いたところで、呼吸が戻ったと一瞬思ったのだが、再び息を吸うことはなかった。
17歳とちょうど8ヶ月。
僕の抱きかかえる腕の中で、トラは静かに息を引き取った。