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7月27日 (2015/7/27 21:01:37)
荒川さん、酷暑の中での実地試験、お疲れさまでした。
これから本当のパイロット人生が始まります。
ご自分の機体とご自分の飛行場での今後のご活躍を期待しています。
せっかく、楽しいことが有ったのですが、昨日の事故に触れないわけには行きません。
「調布飛行場での事故」
事故の巻き添えで亡くなった方と、搭乗者の方のご冥福をお祈り申し上げます。
今日一日、住宅密集地での事故の放送が、どこの放送局からも放映されていました。
事故の原因は今後、事故調査委員会が調べると思いますので、ここで原因云々を記載しません。
しかし、原因の一つとして、重量オーバーを取り上げざるを得ません。
通常、ほとんどの軽飛行機は座席数だけ搭乗者が乗ると、燃料は満タンにはできません。
ましてや、この炎天下での密度高度は簡単に3000ft以上になります。
重量オーバーでも、即機体が壊れるわけではないことは、パイロットであればだれでも知っている事ですが、離着陸距離や、上昇率には即影響します。
今日の荒川さんでは有りませんが、実地試験では1時間以上をかけて、機長の出発前の確認事項の説明を行います。もちろん実地試験ですから、時間をかけて説明するのですが、通常の飛行でもこの機長の出発前の確認事項はなされなければなりません。
その中には、使用航空機の性能の確認と言う事項があり、また、航空機の搭載重量の確認も有ります。
着陸はパイロットの腕により差が出るものです。しかし、離陸はその浮揚速度に達しなければ、いくら腕の良いパイロットでも機体を浮かすことは出来ません。
その浮揚速度に達する距離は飛行規程に記載されています。
私の持論なのですが、飛行中、怖いと思ったら、操縦桿を前に倒す操作は、人間が本来持っている本能的な操作と真逆の操作だと思います。この操作だけは操縦訓練でしか養われない操作だと思っています。私のインストラクターとしての経験でも、何か予期しないことに遭遇すると、操縦経験の少ない人はかならず操縦桿を引きます。何度、右席で「頭を押さえろ」と大声を上げながら、操縦桿を引こうとしている左席の力に対抗して、操縦桿を押したか分かりません。
パイロットには、何か怖い思いをして、うまくなる人と、想像力で怖い思いをしないでも、うまくなる人がいます。私自身は前者だったと思うのですが、できれば常に想像してください。
今回の事故機のように、主翼が薄く、なかなか揚力が発生しにくい翼型の機体が重量を超過した状態で離陸する事を想像して下さい。エアーボーンして、グランドエフェクトの無くなる、ほぼ翼長の高度を過ぎた頃から、上昇率は見る間に少なくなり、同時に速度が抜けて来ます。
そこで、本能的に操縦桿を引くのではなく、押さなければならないのですが、このような状況で操縦桿を押すと、一瞬にして高度を失ってしまいます。これは怖い思い等と言う生易しい状況では有りません。この状況を想像し、このような状況に自分を持って行っては行けないのです。
パイロットは色々な状況を想像してください。そして、そのようなクリティカルな状況にならないようにしなければなりません。
昨日の事故で、私自身が今日一日感じた事を書きました。
皆さんのほんの少しのたしになれば幸いと思います。
中澤愛一郎