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feed ポーラーカーブ (2019/3/9 6:00:00)
最近思い立って Speed-to-Fly (以下S2Fと略) の理論についていろいろと読んだり調べたりしています。
その中で必須となるのがポーラーカーブです。
ポーラーは機体の種類だけでなく、ハーネス、翼面荷重などにも大きく影響されるのでポンとひとつだけ出てくるものではありませんが、S2Fとポーラーカーブは切り離せない関係なので、とりあえずWeb上で拾えるデーターを元にまとめてみました。

polar_data.png

左の legend に各機体の最良滑空比と最小沈下速度を記載しました。グラフのX軸は対気速度(km/h)、Y軸は上昇/沈下速度(m/s)です。

多くのフライトコンピューターでは、ポーラーカーブは速度の2次関数として表現していると思われます(Flytec/Brauniger と Naviter Oudie しか確認はしていません)。実際のポーラーカーブは 有害抗力(form drag)と誘導抗力(induced drag)の和 なので、単純に2次関数として表現することはできません。
全速度域について実際の速度を2次関数で表現することは不可能なので、実際に使用する速度域において良い近似を得るためにコンピュータに入力する値を選ぶ必要があります。
また、ポーラーのためのデータを実際のフライトから収集する場合、対気速度が TAS(True Airspeed、高度によって変化)なのか、IAS(Indicated Airspeed、高度によらず一定)なのか今回集めたデータの各ソースに示されていないので、厳密に言えばこれらのポーラーデータを単純に並べていいのか不明ですが、もともと個体毎のばらつきがあるものなので、ここではその点は気にしないこととします。
なお、失速速度以下の速度域、またパラの速度域の上限を超えたところまで線が描かれていますが、近似した2次曲線を描画したためにそうなっています。

ATOS VR/VRS

私はVRSに乗っていますが、VRと比較すると明らかに沈下率が大きいので、VRSのポーラーはVRのものに全速度域で0.15 m/s 沈下率を大きくしました。80km/hより上の高速域がまだ良すぎる気もしますが、とりあえずこれで良しとします。

Wills Wing Talon

リンク元の図中に書かれている、Competition harness and configuration での値を採用しました。Talon はもうかなり前のモデルになりますが、未だにこのデータを載せているということは、Talonと後継モデルT2の差はそんなにない、と考えているのでしょうか。しかしこのポーラーデータは最新のT2Cなどと比べると乖離が大きい気がします。
それでもU2を上回っているというのが不思議。

Aeros Combat L 13

もう1機角なしフレックス。数値が載っていなかったので、デジタイザーアプリで値を拾いました。同じカテゴリーなのにTalonのデータとかなり違います。70km/h 以下ではVRとあまり変わらない性能ということになっています。

Ozone Enzo 2/Zeno

最後はパラグライダー。2ライナーコンペ機のポーラーです。ソースは失念しましたが、 paraglidingforum.com のどこかのスレッドに書かれていたものを拾って少し修正しました。
このポーラーでの最良滑空比は11.5ですが、PWCのログを見てみるとサーマル間のグライドで12以上出ていることが多いので、トップパイロットのパフォーマンスはこのポーラーデータよりも良い可能性があります。
また、Enzo/Zeno のサーマルでの浮きは実際に一緒に飛んだ経験からは角なしフレックスやVRSと同等のレベルなので、沈下率についてもこのデータよりも良いと考えられます。

このポーラーを眺めてもつ感想は人それぞれだと思いますが、大事なことは機体間の比較ではなく、自分の機体/ハーネスセッティング/翼面荷重でのポーラーデータはどうなのかを知り、それをどのようにS2Fに活かすのか、ということです。
S2Fはグライディングの世界では当たり前のコンセプトとして受け入れられていますが、速度域がずっと低くて狭いハングやパラの世界においてS2F、特にマクレディ理論はどれだけ使えるものなのか、ということも含めておいおい書いてみたいと思います。

PS
今回のグラフ作成には Desmos というサイトを使いました。回帰曲線も描かせる事ができてかなり便利です。興味のある方は自分の機体のポーラーを描いてみてください。


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