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第16回JPAパラグライダーカップ in 富士山 (2019/5/14 16:17:42)
競技委員長:藤野 光一
平成から令和へと時代の移り変わった2019年のゴールデンウィークでしたが、その令和になってすぐに開催されたのが今回の「第16回パラグライダーカップin富士山」です。
従来は1月のいわゆる「朝霧シーズン」である冬に開催されていましたが、昨年から5月に開催されるようになりました。5月と言えば、春から初夏へと移り変わる季節です。ここ朝霧高原も暖かな春の風と日差しの中で、ヒートグローブの不要な(高度によっては必要かも)空が私たち選手を迎えてくれます。
今年は、ナショナルリーグとN2リーグの併催により、5月11日・12日に開催されました。
5月11日(大会1日目)
つい1週間前くらいまでは、大会予定の2日間はおよそ芳しくない天気予報だったのですが、直前になってから劇的な変化を見せ、大会初日は高層雲が空を覆うものの概ね晴天の朝を迎えました。
今回はナショナルリーグが40名、N2リーグが16名の56名。N2リーグはグランプリ大会でもあり、この朝霧で2019年の、そして令和最初のN2グランプリチャンピオンが決定されます。受付に先立って猪頭ルールの受講や更新のために、選手は6時から大会本部に訪れます。そして、7時から選手受付、テイクオフへの選手送迎と本日のスケジュールが着々と進行して行くのです。
テイクオフの周囲をウェイティングゾーンとして、選手に準備してもらいます。テイクオフは基本フリーテイクオフですが、集中した場合は優先順位によって順序が決められます。
9時からは開会式が行われ、田中美由喜大会実行委員長による挨拶のあとで競技委員長によるジェネラルブリーフィングに入ります。
初日の天候はまずまずながら、気象データによっては降水の可能性もゼロではないため、あくまで最悪の状況を想定し、安全最優先で大会が運営されました。
そのため、タスクは遅くとも15時30分には終了することとし、それから逆算して全てのスケジュールが組み立てられました。
夢のタスク
ナショナルリーグのタスクは、タスクコミッティーの星田選手が強い拘りを持って組んでくれた42.1Km。使われているTPに注目して欲しいのですが、
- A54 芝川
- C81 富士山
- B22 毛無山
- C86 大石寺
- A56 世界地図
など、朝霧エリアを飛んだことのある方ならば、一度は目標として目指したことのあるところばかりです。実際には大きめのシリンダーを採用しているので、現地まで行くことはありませんが、朝霧らしいTPを使った大きなタスクとなりました。
N2リーグは日本グランプリを決めるための大事な1本目ともなります。こちらもタスクコミッティーの谷藤選手が中心になり、競い合うに丁度良いサイズの空域をチョイスした30.2Kmとなりました。
両リーグとも、Window Openは10時20分、一斉スタートが12時。
風が不安定な時間帯もありましたが、11時30分には全ての選手が空中に飛び出してスタートを待つだけの状態になっていました。中には3000m付近まで上昇し、秘策を練っていた選手もいたようですが、概ね2000mを超える高度で待機していました。
ナショナルリーグTASK1
ナショナルリーグは12時のスタート5分前あたりから、今回は沖に設定されたB33ドコモアンテナの1000mへ向けてグライドを開始。目視でも2500mはありそうな高さで、悠々とスタートを切って芝川TPへと向かって行きました。レースはスタートを上手く切った先頭集団のNo.1高杉選手、No.3中村選手、No.5星田選手、No.12竹尾選手、No.13隅選手、が終始レースを引き、その後方からNo.2稲見選手やNo.4中島選手、No.15関根選手らが追随する展開となりました。先頭を入れ替わりながらも、やや強めの南風をものともせずに朝霧エリア一杯を使ったコースを着々と駒を進めます。
まったく危なげない飛びでタスクをこなす先頭グループの中からNo.1高杉選手とNo.3中村選手が天子からYMCAへ低くグライドする上を、高い高度でフルスピードで抜いていったのがタスク考案者のNo.5星田選手。そのままトップゴールを決めたのでした。
トップグループがゴールを決めた頃から、猪頭付近上空は西側から立ち上がってきた大きな積雲に日射を奪われ、一時対流が停滞する厳しい局面となりました。この時間帯に高度が低くなってしまった選手の中には、力尽きてWingkissメインランディングに降りてしまいます。
その後、日射も回復したものの、やはり大きく好転するようなことにはならず、何とかサーマルを拾い集めて稼いだ高度で沖のTPをクリアしたものの、テイクオフ付近で上げるのに苦労しながら時間を使ってしまった選手も見受けられました。そして何とかゴールしようと粘る選手に無情にもタスククローズ時間が・・・。最後まで頑張っていたのはNo.41伊藤選手。お疲れ様でした。
N2リーグTASK1
N2リーグは長者岳トップ1000mがスタート。こちらも高く稜線上を移動して行き、やがて3機が他を引き離してトップグループを形成します。No.308岩野選手、No.313谷藤公明選手、No.317谷藤幸子選手の今井浜チーム。No.308岩野選手が終始レースの先頭を走りその後方をNo.313谷藤公明選手、No.317谷藤幸子選手がやや高く追随する展開がレース終盤まで続きます。このタスクの山場である富士山TP15Kmを取ってやや低く戻ってきた岩野選手が西富士斜面で高度を上げている上空を谷藤夫妻がパスしてB48熊森山TPをクリア。そのまま高度を上げ始めてファイナルグライドに備えます。下から上がってきた岩野選手もB48をクリアしたタイミングで3機はほぼ同時にファイナルグライドに入り、Bクラス機の岩野選手をCクラスの機の谷藤幸子選手が抜き去ってトップゴールを決めました。
こちらも高度をあまり上げなかった選手や、低く戻ってしまった選手がテイクオフ前で粘りますが、強まった南風で前に進むこともままならず、ほぼ全員がWingkissのランディングへと向かって行きました。
TASK1成立
終わってみれば、ナショナルリーグは28名がゴール。N2リーグも13名がゴールし、選手は大満足のレースだったのではないか?と思います。
ただ、ゴールとなったYMCAではサーマルの発生源になっていたことと、折からの南風が強めに入っていたこともあり、降ろすのに苦労している様子ではありました。
ゴールに無事降り立った選手は、みな満面の笑みでお互いの健闘を讃えあっていました。
懇親会
夜の懇親会では、みなさん今日のフライトについて楽しく語らう時間となったのではないでしょうか?
そんな時間を利用させていただき、2018年のN2リーグ日本グランプリチャンピオンに、チャンピオンカップの返還式とレプリカの贈呈を行いました。
昨年のチャンピオン田村選手、田前選手、おめでとうございます。
5月12日(大会2日目)
今日は機能と違って朝からクリアな空です。しかし、大気の不安定さは昨日以上になっており、午後には高確率で雨の予報となっています。
2日目の富士山
選手受付は7時から。そしてテイクオフへの送迎は7時30分からと、早め早めの進行となりました。
8時30分には全ての選手がテイクオフに集合していたのではないか?と思います。
競技委員長も今日は巻きの動きで行きたい様子。準備する選手にその意思を伝え、選手にも協力を求めます。
タスクコミッティーと今日の条件を共有します。どの気象データからも、午後に降水があるのは間違いないようなので、最も早い予想データを参考にタスクは14時にクローズすることとします。また、万一、途中で状況に変化があれば「タスクストップ」も視野に入れての競技を行うことも考慮しました。
ナショナルリーグは今日も朝霧エリアを大きく使った46.3Kmとなりました。
N2リーグは昨日のタスクで日本グランプリが成立していますが、今日の1本で逆転劇もあることからエリア内を大きく使ったトライアングルタスクとなりました。
昨日は11時には十分なコンディションになっていたこともあり、今日は全てを前倒しで行います。
両リーグともにWindow
Openは9時30分。スタート時間は11時とし、午後に悪化することが予想されるコンディションの良い部分を可能な限り使いきることを念頭に置いてスケジュールが組まれました。
今日も昨日ほどではないにせよ、選手は高い位置でスタートまで待機しています。2000m越えの好条件でスピードレースが期待されます。
ナショナルリーグTASK2
本日のトップグループはNo.3中村選手、No.5星田選手でしたが、それに加えてNo.11山本選手が気をはいています。中盤のほとんどでトップを引いたのがNo.11山本選手でした。
この日は高く移動しながらも、南風が強くなりはじめたこともありテンポはやや遅め。特に南への移動が長いレグでは、さすがのCCC機でも動きはスローにならざるを得なかった様子で、おそらく選手は歯を食いしばってアクセルバーを踏んでいたのではないか?と思います。
そして12時を回った頃にトップグループがB06もち屋TPをクリアして2度目のB26大倉ダムへ向かって行ったあとに、エリア全体に強い南風が吹き込んでしまい、N2リーグの最終TP付近が特に危険な状況であったことから12時29分タスクストップとなりました。
N2リーグTASK2
N2リーグの2日目はNo.313谷藤公明選手。タスクのほぼ全てのレグに置いてトップを独走します。それを追うのが昨日先頭を飛びながらも最後に捲られてしまったNo.308岩野選手。そしてNo.324西川選手。自分のペースでわき目も降らずに駒を進める谷藤選手。そのペースは最後まで変わらず、最後の沖だしであるA59木島牧場TPを高く取りに行き、事実上のファイナルグライドを切った後で勝負の難しさと言うべきか、コンディションが大きく変わってしまいます。
谷藤選手の後方数百メートルを岩野選手と西川選手が追随します。最終TPであるB23長者岳1000mに入るために陣馬の南側に進入した谷藤選手を待っていたのは強い風と荒れた空域でした。ゴールは当然で、おそらくトップゴールを確信していた谷藤選手に突き付けられたのは、ゴールを諦めて安全にランディングすると言う厳しいものではなかったか?と想像します。
その様子を冷静に見ていたのが岩野選手。沖からのコースを長者ダイレクトではなく、一旦陣馬尾根から攻めると言う方法に変え、厳しい空域を避けたのは好判断だったと思います。そのまま安全な高度を保って長者をクリアして見事ゴール。それから遅れること15分後にNo.324西川選手、No.309貝田選手、No.312岸選手がゴールしました。が、この後長者付近の空域が非常に危険な状況となり、12時29分にタスクストップとなりました。
TASK2成立
タスクストップとなったものの、ナショナル、N2両リーグともに選手は安全にランディング。怪我人もなく無事TASK2が成立しました。
しかし、いつもながら自然相手の競技であるパラグライダーの怖さを感じます。僅かな判断の遅れやミスによって、自身を簡単に危険な状況に追い込むことになってしまう可能性があるのです。大会を運営するオフィシャルはもちろんですが、参加される選手自身も常に状況を把握し、自分の安全を確保するだけの対応策を複数用意できるように日頃から訓練しておくことが重要だと思います。やはり、わたしたちにもKY(危険予知)力が求められます。パラグライダーの操縦技術や気象、フライト知識などと並び、KY力も重要なスキルとして身に着け、向上させる必要があるでしょう。
ナショナルリーグ表彰
ナショナルリーグの入賞者のみなさま、おめでとうございます。
総合
優勝 5 星田 真一 OZONE ENZO3
準優勝 3 中村 浩希 OZONE ENZO3
第3位 12 竹尾 雅行 OZONE ENZO3
第4位 1 高杉 慎吾 OZONE ENZO3
第5位 13 隅 秀敏 OZONE ENZO3
第6位 2 稲見 祐二 GIN GLIDERS BOOMERANG11
女子
優勝 14 小森さちよ OZONE ZENO
準優勝 16 星田 苗月 OZONE ZENO
第3位 17 天野 月子 NIVIUK PEAK4
第4位 19 吉川 朋子 OZONE ZENO
第5位 37 岩崎 聡子 NIVIUK KLIMBER P
第6位 39 三浦亜津子 NIVIUK KLIMBER P
チーム
優勝 瀬戸内少年飛行団
(2稲見祐二、11山本雅史、24田前英代、35田前敏、40山田俊介)
準優勝 夫婦善哉
(5星田真一、15関根順、16星田苗月、38食堂信昭、45関根睦)
第3位 Z3
(1高杉慎吾、13隅秀敏、63竹内直之)
N2リーグ表彰
N2リーグの入賞者のみなさま、おめでとうございます。
総合
優勝 308 岩野おさむ ADVANCE IOTA2
準優勝 313 谷藤 公明 BGD CURE
第3位 312 岸 幸民 ADVANCE SIGMA9
第4位 317 谷藤 幸子 ADVANCE SIGMA10
第5位 309 貝田 仁 NIVIUK ARTIK5
第6位 303 松岡 茂 NOVA MENTOR5
女子
優勝 317 谷藤 幸子 ADVANCE SIGMA10
準優勝 301 千葉 恵 GIN GLIDERS BONANZA2
チーム
優勝 今井浜
(308岩野おさむ、313谷藤公明、314斎藤光秋、317谷藤幸子)
準優勝 西日本連合
(312岸幸民、310藤原雅宏)
第3位 とちおとこ
(323園部和夫、324西川鎮治)
N2リーグ日本グランプリチャンピオン
308 岩野おさむ ADVANCE IOTA2
317 谷藤 幸子 ADVANCE SIGMA10
5月の朝霧高原で開催されたPGカップin富士山でしたが、これで2年連続で好天に恵まれ成立いたしました。参加された選手のみなさまはもちろんですが、Wingkissの中川様はじめエリアの方々、大会開催と運営にご協力いただいたスタッフのみなさまに、この場をお借りして感謝申し上げます。
来年も新緑まぶしい朝霧高原で、朝霧らしいタスクを用意してみなさまをおまちしております。ぜひ、来年もPGカップin富士山をよろしくお願いいたします。