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link 呉本圭樹blog 呉本圭樹blog (2025/1/10 10:39:10)

feed 九死に一生を得る (2019/8/10 14:21:30)
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大会3日目

朝は珍しく空に雲。
といっても天気は良いには変わらないのですが。


ただ、毎日の天気の変化はコンディションの変化。
朝の天気も気にしていかないといけません。

まだ前半戦。ここは気を抜かずにかっちりゴールを決めていきたいところ。
この日のレースは83㎞。
スタートを山側から周り、最初のターンポイントはこの広い平野の一番北。
そこから平野の真ん中を南へ25㎞、そして折り返して北へ15㎞でゴールといったレース。


初日のグライダーの翼端の潰れに対して原因となる右翼だけ、少しのグライダー調整を行い、
昨日は問題は改善されたように感じるものの、少しだけグライダーパフォーマンスが落ちているようにも
感じる。

この影響が今日の最後に出てくるとは思わなかったけれど・・・・。

離陸は私はいつものように早くに出ていきます。
地上で待つより、空でコンディション見ながら待つほうがいい。

離陸後は昨日よりは高度が上がらない。
なかなか1,500mを越えていかない。上空の風は北東、なので、最初のスタートポイントに対して
ストレートに行くよりも北上しておいてスタートしたほうがスムーズだと北へ北へ行く。

時間がたつにつれ、ようやく温まってきたのか、少しずつ高度は上がっていくが、
全体的に弱く、昨日のイメージでは危険。

2,000mをようやく越えてきたのもスタート前30分。
最初に離陸した私と10機ほどが苦労して進むのに、後の人たちはこのポイントまで来れないのでは??
これはスタート有利か??

とほくそ笑んでみましたが、そうは問屋が卸さない。

ほぼ全員がスタート前数分前に同高度まで高度を上げてきた。
...さすが世界選手権

スタートはいつもの通り大集団。
もう混雑の極り


まっすぐ進むのにも上下左右すべてにグライダー。
その中でラインを見ていかないと高度が下がる一方です。

高度を定期的に上げ、ターンポイント1を無難にとり、南下。
いい感じに最初のグループで進む。

ここから山を離れるので、集団を崩していくことにメリットは少ない。
そしているのはトップ集団。
周りに飛ぶメンツもよい!

しかし、少し離れてもすぐ後ろになったグループも追いつき、時に追い越され
ほぼ一つの集団になって進んでいく。

ここはテクニックというよりも駆け引き。


南下していくと東の山の空は明らかに不穏な雰囲気。
”ピカ!!!!!”

えッ??今なにか光りましたが...。
チーム無線でも雷が!!という話になるが、悪い天気がこちらに来ないことを祈りつつ先に進む。

最後のターンポイントを取り、折り返し。
10番手ほどの場所でゴールへ向かう。
こうどは少し足りないが、先にある上昇を使えばあるいは??

それよりも私より先に行き、低い人たちは躊躇なく進む。


スピードを上げ、できるだけ滑空をよく飛ぶ。
それだけを考え、効率よく飛ぶ為にアクセルを踏み込み、ブレークコード(ハンドル)から手を放し、
その代わりにライザーでグライダー全体をコントロールすることに徹底していく。

高度は微妙。
でもそのスピードは下げない。
確かにところどころサーマルがあり、何とかそれでゴールまで高度100mほど残せるのではないかというところの
残り6㎞地点。

それは突然だった。
前触れなくグライダーの右翼は一気に潰れ、グライダーの2/3が無くなる
時間さなく一気に右にダイブするグライダーをライザーを引き込み、強引に止める。
ブレークを持っていないので反応は遅れる。
しかし、できる操作をするしかない。
ライザーを引き込んだことで旋回は止まったが、そのままストールに入る。
何とか旋回するグライダーをとどめながら、失速の状態から回復しなくては。

一瞬下を確認。
高度はある。

まだ最悪ではない。
グライダーが失速状態で一瞬安定した瞬間にブレークコードを取り、今度はグライダーに衝撃を与え滑空方向に
もっていく。
今度はグライダーが一気に自分の前に出ながら旋回しようとする。
失敗。
もう一度ストールへ。
すぐにもう一度前へ。
今度はセンターから飛び始める。
行き過ぎた勢いだけを止める。

グライダーセンターが通常滑空をはじめ、残りの翼端を修正。

何とか回復。
状況確認。

一気に高度を100mロスした・・・・

ゴールまでぎりぎり届かないかもしれないという高度。
もうスピードは上げられない。
この時間に20機ほどに抜かれる。

しかし、試練はまだ続いた。

時間計測のゴールラインを切って、そこからゴールラインまでは2㎞。
その距離を飛ぶ高度がない。
しかし、それはどうやらトップ集団全員がそうだった様子。

私も時間計測ラインを取った時には対地100m、
でもここで降りたらタイムポイントはつかない。
ここから長い長い弱い上昇との闘い。

同じような高度に数十機のグライダー。
真下は敢え無く着陸してしまい、我々を見上げるパイロット。
あんな風にはならない!!!!

弱い弱い上昇を丁寧につかんであまり変わらない高度をひたすら旋回していく。
徐々に、徐々に上がっていく高度。

風はゴールとは反対。
旋回するたびにゴールが遠のくが、それをかまうよりも、まずは高度を上げること。
時間計測は終了しているので、どれだけ時間をかけてもゴールラインにたどり着けばよい。


格闘してどれくらい時間がたって、どれだけ旋回したんだろう。
ようやく上昇は安心できるくらいに強くなる。

周囲のパイロットがみな雄たけびを上げる!!
俺たちは生き残った!!!

そして十分すぎる高度を残してゴールラインを切った。

この日私は2回生き残った




ゴールできていれば10位ほどだったが、結果30位。
それでもポイントは960点つき、ゴールもできたので
良かったとしよう。

グライダーは小さな潰れが改善したことで、グライダーが耐えていた分、
それを越えた反動で一気に失速したのではないだろうか。
明日のセッティングは少し変えていこうと思う。

現在3日間が終了した時点で18位。
国別は11位
だけれど両方とも点数差は僅差。

まだ前半戦。
ここは焦ることなく明日以降も飛んでいきます。

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