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出発日前夜、荷造りの最中に、突然、友人の来訪を受ける。
退職して早10か月、大晦日の前日、新年を前に早めの挨拶に来たのだと言う。
「ごめん、今バタバタ。この三連休、Genting Highlandに行くんだ。」
「あんな所，TOMIHARAさんに一番似合ってませんよ。
　何しに行くんですか。一日も持たないでしょう。」
自分のことは、得てして自分より他の人の方がわかっているものだ。
仰る通りだった。
訪れてみて、彼の言葉が脳裏をよぎった。いや、何度も何度もこだました。

1700mの山頂に、ショッピング・エリアとレストラン街、
室内、室外遊園地、娯楽施設のオンパレード。
そもそも田舎育ちで街が苦手な私。
都会に出るだけで、エネルギーがすり減っていく。
ましてここは狂気の世界。
「人間はこんなものを作り上げて、一体何処に向かっているのだろうか」
へとへとである。
日本料理屋を見つけて思わず逃げ込む。1000円ちょっとの海鮮鍋。
ほっと一息。気を取り直していざ出陣。
向かった先は、マレーシアで唯一のカジノだ。

統合型リゾートだとか、日本では何やら立派な名前を付けて
正当化している話題の場所。
ここは社会見学の為に、いや、一戦交えて、旅費を稼がねば。

これまたエネルギーをすり減らす。
勝ったり負けたり、丁度1時間で750円勝ちのところで切り上げる。
時給750円。

この5年間でカジノは3回、何れもほんのちょっと勝ちで3連勝。
パチンコと同じで、「殆ど」勝てる方法は会得した。
ゲームはルーレット、
1－12、13－24、25－36の三つのうち、二か所に張る。
2/3の確率で勝ち、当たれば３倍になる。期待値は１．
但し、ルーレットにはゼロがあり、正確には僅かに１を切る。
0になると、皆さん総負け。
ディーラーには狙ったところに入れる技術がある。時々0に入れて来る。
他の方が大きく張っているところを観察して、そこには掛けない。
0を狙いだしたと思う時はお休みする。
場合に因り、掛ける金額を調整する。
そして、勝っている時に止める。これが鉄則である。
最大のポイントは自己コントロールだ。

この手法でやると、かなりの確率で勝てる。
でも、一つ問題がある。全く面白くないのである。
感情をコントロールし、機械的な作業を続ける。
①勢いだけで挑み、ぼろ負けして、アホな自分をさげすむか、
②全く面白くない方法で、ほんのちょっと勝って、時間を浪費するか。
二者択一を迫られた時、答えは大体別のところにある。
結論は、単純に「行かないこと」だろう。