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feed AATタスクについて (2022/2/9 11:20:20)

 今回のKanto Gliding Cup 2022ではいつものスピードタスクに加えてAATタスクにも取り組みます。AATはいつものスピードタスクとは攻略法が異なるので、まだAATを飛んだことがない方は準備をしておいてください。いま世界中で行われているグライダー大会ではこのAATが一般的なタスク形式になってきています。実をいうとCondorはまだこのタスク形式には対応していないのでフライトの時には注意が必要ですが、上級者もまだスピードが上がらない選手もだいたい同じ時間にR/Wに帰ってくるので楽しいです。Condorを始めた頃はタスクを回ってくるのに上級者の2倍くらいの時間がかかってしまいおいてきぼり感を感じてしまうのですが、AATではだいたい同じくらいの時間に帰ってくるのでタスク終了後のR/Wトークにも楽しく入ることができます。

さてさて、能書きはこのあたりにしてAATタスクについて説明していきます。

 AATまたはAAT/SはSpeed Assigned Area Taskといって、大ざっぱに言うと一定の時間を目標にフライトの平均速度を競うもの。パイロットは定められたエリア内でTPを自由に決められるタスクです。最低フライト時間が決められていて、速い人はできるだけ遠くまで飛んで平均速度を上げ、遅い人でも自分の技量でチャレンジできるところまで飛んで帰ってくる競技方式です。この方法だと、遅い人でもおいてきぼり感を感じることが少なく、それぞれの技量に応じてチャレンジできるので幅広い技量の人が一同に競技を行うことができるといえます。

1.タスク例:JP Saturday Flightでも このようなAATタスク を組んだことがあります。

スタートライン:幅6km、海抜1,500m以下
第一レグ:62km、第二レグ:76km、第三レグ:41km、合計178.6km
TP1は半径30kmの円、TP2は半径20kmの円になっていますので、一番短いコースをとると87.65km、一番長いコースをとると273.02kmのフライトをすることができます。
このタスクでは最低飛行時間を1時間30分としていました。

AATではフライトの最短時間を競うのではなく、平均速度を競います。そのため同じ時間で飛んでくるならできるだけ遠くまで飛んできたほうが平均速度が高くなり、高い得点を取ることができます。パイロットはそれぞれがこの大きな円の中で自由にTPを設定することができ、距離の計算はOLCのようにフライト後にPCで一番遠くまで行った地点をGPSデータから検出して距離計算をし、フライトの平均速度を求めるようになっています。

このとき既定の時間より早くゴールしてきた人は残念ながらフライト時間は決められた最低時間で計算されます。たとえば、このタスク例において最短距離の87.65kmを1時間で飛んできてしまった場合、計算に使う飛行時間は最低飛行時間の1時間30分となるので平均速度は

87.7km÷1.5h=58.5km/hとなって、1時間30分かけて飛んできた人と同じ得点しかもらうことができません。

一方、タスク通り178.6kmをちょうど2時間かけて飛んできた人は

178.6km÷2h=89.3km/hとなることになります。

さて、最低飛行時間以上に飛んだ場合はどうなるかというと、サーマル条件や地形などさまざまな要因があるのでなかなか難しいのですが、単純な平地でサーマル強度や出現する確率がエリア内で全く同じ状況であれば、最低飛行時間以上に飛んだ場合はスタート時点での高度を十分に生かすことができなくなり、長く飛べば飛ぶほど不利になるといわれています。

そこで、フライトの目標としては自分の持てる最大限の技量を使って遠くまで飛び最低飛行時間をちょっと過ぎる時間でゴールすることということになります。

2.AATの飛び方

 AATを攻める場合、大事なのはフライト中にタスクの残り時間が分かるようにしておくということです。残念ながらCondorのPDAではタスクスタートからのストップウォッチ機能がついていないので、XCSoarなどの外付けのフライトンピューターを使うか、スタート時間を覚えておいてフライト中に都度Eキーを押して腕時計を見て時間を確認することになります。タスク設定においてRealtime scoringがOnになっている場合はTabキーを押せばタスク時間が分かりますが、リアルさを求めるタスクではRealtime scoringはOffになっているので何らかの形で自分で計る必要があります。

 さらにフライト前の準備として、各レグの攻め方や、各レグをどのくらいの時間をかけながら進んでいくのかを考えて作戦を立てておく必要があります。一般には最初のエリアではできるだけ深いところまで飛んで距離を稼ぎ、最後のエリアで最終時間調整をしながらファイナルグライドに入ると良いとされています。そうすれば時間に余裕があった場合は距離を伸ばすことができますし、時間が足りないと思えば手前の方でファイナルグライドに入ることができるというわけです。

 しかし、このファイナルグライドに入るタイミングを計るのは結構難しいのです。通常ファイナルグライドはかなりのスピードになるので、いくら旋回中にPDAを見てゴールまで後何分かかるかを確認していても、いざFGに入ったときにもう一度PDAを見ると予想よりもかなり短い時間でゴールすることがわかったりします。残念ながらだいたいそういう時にはもう後戻りする余裕はありません。戻ろうにも最後にターンしたところよりも遠くまで戻っていかないといけないので往復を残りの時間で飛ぶことができるかと考えるとそのままゴールに向かうしかなかったりします。そんなときは結構悲しいです。

 さらに戦略について研究したい方は最後に参考資料のリンクを載せておきますのでどうぞ。

3.フライトの実例

 以下の軌跡は私が練習用に作った タスク で、シーナリーはLiban、距離は182.1km (min: 110.4km, max: 256.6km)、最低飛行時間1時間30分、TP1/TP2のエリアはそれぞれ20kmとしました。風はそれほど強くないですが西風なのでリッジが使えそうといったところです。

 私は今回は第一レグでは少し奥間で入ってから、リッジを使って第二レグを進み、TP2エリアをわずかにかすめて距離を稼ぎました。

 衛星写真では分かりにくいのですが、第二レグのタスクライン上にもリッジがあって最初はそちらを進もうと作戦を立てていました。しかし、飛んでみると雲底は低くゴールに戻るためのリッジを乗り越えるのが難しそうだったので、当初の作戦をあきらめ安全策の左側リッジを進みました。結果はこの西側のリッジの条件はあまり良くなかったのでTP1のエリアをもう少し外側まで攻めていた方が良かったなぁというところです。

 一度この画像をクリックして拡大してみて欲しいのですが、最終的な距離計算は赤の点線の三角の距離を計測ソフトが自動計算してスピードを出しています。結果は1:37:41、距離181.24km、スピードは111.32km/hとなっています。

 Condorのレースでは一般には Show Condor IGC というソフトが使われていて、フライト終了後にCondorのFlight Analysis画面からIGCファイルを出力して主催者に送ると集計してくれるようになっています。Kanto Gliding Cup 2022でも同じように集計しますので、フライト後に忘れずにアップロードページから送付してください。
https://virtualsoaring.eu/download

4.XCSoarの活用
 実はCondorがまだAATには対応していないので、CondorのTP判定やPDAの情報だけではAATを攻めるのはなかなか難しいです。スピードタスクの場合も便利ですのでXCSoarを使うことを検討ください。これはOpenSourceのグライドコンピューターでAndroid端末、PCでの利用が可能です。VRの方もPCにインストールしてオーバーレイでの利用ができるようです。面白いところでは こちらのページ で外付け端末をVR内で表示する方法が紹介されています。私はXCSoar用にAmazon Fire HD 8 inchの安いほうを特売時に購入、書籍やビデオ再生用としても使ってます。私は普段使いはiOSなのですが、用途を限定して使うなら下手な中華パッドを買うよりも安くてよいと思います。A社製品にはGoogle PlayはついていませんがXCSoarのapkファイルも公開されているのでインストールに問題はありません。Android端末とCondorの接続方法については本家CondorのHPにあるマニュアルをご覧下さい。PC上で使う方法は こちら に書いてあります。

 さて、どんなふうに使っているかというと以下のスクショを参照ください。私はAAT用に別画面を作ってスピードタスクと使い分けています。

 TPエリアに入ってくるとArm turnボタンが出てくるので、ここで次のTPに向かうと決めたらそのボタンをタップします。そうすると次のTPの目標点が表示されるようになります。スクショはTP1からTP2に向かうところ、目標点と円弧がTP2エリアに表示されているのが分かります。この円弧状であればゴールまで同じ距離をたどるということなので、風向風速、地形やクラウドストリートの出来具合、ファイナルグライドに入る高度や位置などを考えながらどこに向かうかを決めます。XCSoarは賢いようでRecommendationに関してはちょっと?なので、与えられた情報を使って自分自身で判断することが必要です。

 以上、簡単に解説を書いてみましたがAATタスクについての質問やAndroid端末の接続方法などお困りのことありましたらForum上で投稿いただければと思います。また、主に英語資料となりますが、いくつか情報リンクを記しますので皆さん研究してみてください。

Naoki_NT3

(参考)
プレゼンテーション資料
Assigned Area Tasks/Speed Tasks (AST) - Run tasks
http://www.waga.org.au/dhl/xc-reference-material/74-aat/file
プレゼンテーション自体を効いてみたいと思いますが、この資料だけでも多くのことを語ってくれています。

Youtube:英語版ですがYoutubeのキャプション、自動翻訳機能を使うと結構わかると思います。

AAT Tasks: Mater Them To Improve Your Contest Flying!  さまざまな状況にどう対処するかが解説されています。
https://youtu.be/WXGDWeweqEk

Day 7 & What is an AAT?:実際のレースを攻めるに当たっての作戦について解説して売れています。
https://youtu.be/1v1buxaQ5Nk

XCSoarマニュアル はこちら
【日本語版】
XCSoar v6.4 マニュアル  38ページ「10.3 AATタスク, Manual Arm」
https://pascaljin.files.wordpress.com/2012/09/xcsoarmanualjapanxx.pdf
【英語版】
XCSoar v7.21 マニュアル  64ページ「5.13 Assigned Area Tasks」
https://download.xcsoar.org/releases/7.21/XCSoar-manual.pdf


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