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feed 2022WP-場外乱闘編 【大ウソつきが飛んだ5月28日(土)のウェーブ100㎞△飛行】 (2022/6/6 19:26:43)
(※クラブMLに配信したウェーブプロジェクトのメールを、ブログに転載しています)

JSCのみなさん、こんにちは。2022WP-場外乱闘編【大ウソつきが飛んだ5月28日(土)のウェーブ100㎞△飛行】 を送ります。

1.大ウソのわけ
5月26日(木) 未明1:34に2022WP-15 【2022WPのまとめと終了のお知らせ】を送ったばかりなのに、同日の夜、28日のスカイサイトウェーブ予想図を見て驚きました!今までは大したウェーブでは無かった(と言うよりは使えないウェーブだった)予想図に、北アルプス・北関東・東北盛岡辺りまで、良いウェーブ予想が現れていました。
天気相手で仕方が無い事ですが、ここまで予想が変わるとはびっくりしました!
  fig1
スカイサイトウェーブ予想図 28日14時、19000ft 高原山から栗駒山への502㎞O&Rコース
奥羽山脈のウェーブポイント3カ所(那須エリア、安達太良エリア、蔵王エリア)の予想が強い。北アルプスから北関東へ、更に盛岡まで、ウェーブが続いている。

いろいろ悩んだ挙句、大ウソをついた事を公表し、28日にウェーブフライトを行う事を決め、連絡開始。28日はインストラクターの予定だったのでスタッフMLでINSTの交代をお願いし、Arcusメンバーに28日のウェーブフライトの事を連絡しました。時間がありません。

INSTは、K林さん(29日INST)から連絡を頂き、私(28日INST)と交代して頂ける事になり、助かりました。しかし28日に飛行可能なArcusメンバーが見つからず、W邊YHさんにお手伝いをお願いできる事になりました。公式立会人は当日の運航リーダーU神さんにお願いし、前日の27日夜までにウェーブフライトの段取りができました。
皆さん、ご協力ありがとうございました。

2.28日のタスク
ウェーブ予想図からは、500㎞O&Rも十分可能でしたが、那須エリアのウェーブ予想が強いので、高原山から羽鳥湖にかけての100㎞△速度記録を2回トライする計画にしました。しかし、このエリアにタスクを設定した事を後で悔やむ事になるのですが、飛行前には分かりませんでした。
fig2
100㎞△コースとウェーブ・風の予想図 28日14時、19000ft
100㎞△コースと強いウェーブ予想位置がピッタリと一致している。風向もほぼコース(奥羽山脈)に直角、風速も60kt程度で良い。

28日朝8時に藤岡駅でW邊さんに拾ってもらい、Arcusに慣れていないW邊さんと、急がずに準備を進めて11:50に離陸。100㎞△を一周半回って(2回目の第2旋回点に行かずに)17:03に着陸しました。

3.実際のウェーブはどうだったのか  
fig3
衛星可視画像 28日14時
東北北部までローター雲が奇麗に並んでいる。100㎞△コースの位置はローター雲の一番南端のウェーブの弱くなる辺りとなる。北アルプスのローター雲は少ししか見えない。
 実況天気図 28日15時
等圧線の曲がり方はあまり良くないが。。。

北方向への3000ft曳航後、エンジンを始動し、高原山の第1波を目指してサーマルやウェーブを探しながら北上しました。途中、強いサーマル+エンジンで上昇して氏家滑空場までグライドし、氏家滑空場の風上側でエンジンを再始動。100㎞△スタートポイント近くで高原山の第1波に入りエンジンを止めました。しかしその後なかなか良いウェーブに当たらず、2回目のエンジン再始動後にやっとウェーブで安定して上昇開始しました。
渡邊さんにコントロールをお願いし、口頭で指示を行い、ウェーブで上昇してもらい、私は腹ごしらえ。スタート地点よりも更に北に上昇しながら進み、第1旋回点の少し手前、白河市の西辺りでFL190まで上がり折り返しました。スタート地点に戻るので、高度を落とさない様に飛び、FL205まで上がり、スタート高度はFL185 でした。
今までやろうやろうと思っていて出来なかった、高い高度からのスタートを行うことができました。

スカイサイトウェーブ予想図では、28日の午後、特に14時から16時にかけて、かなり良いウェーブが100㎞△コース全体のエリア(高原山から那須岳、羽鳥湖まで)で発生する予想でしたが、実際に良いウェーブが発生したのは那須岳の辺り以北で、そこより南側では弱いウェーブでした。
つまり私が設定した100㎞△コースの北半分は強いウェーブのエリアでしたが、南半分は弱いウェーブのエリアだったので、これが平均速度を上げられなかった最大の理由でした。

私は、高原山から宮城県の七ヶ宿湖にかけて、100㎞△コースを3つ設定していますが、28日に飛んだ一番南のコースではなく、その北側の、猪苗代湖から安達太良山にかけてのコースを飛べばもっと速い平均速度を狙えたかもしれないと悔やみました。(捕らぬ〇〇〇の皮算用ですが。)

ゴールする事が目的の飛行では、ゴールできる様に、ウェーブの強さに応じて飛行速度を調整して飛びます。平均速度はウェーブの強さに応じて変化します。しかし速度記録を狙う飛行では、出したい平均速度を達成できる様な飛行速度をまず決めてしまい、その速度を基準として、ウェーブの強さに応じて速度をある程度調整しますが、なるべく速度を抜かずに飛びます。
その結果、高度が下がり、スタート高度マイナス1000mを切ってしまい、ゴールできない様であれば、ゴールまでのどこかで高度を稼ぐしかありません。その為にゴール前で時間が掛かってしまうと、ゴールしたとしても狙った平均速度が出ず、そのフライトは失敗です。

SeeYouの計算結果によると、第1レグ平均速度は180.73㎞/h、第2レグは185.55㎞/hでした。
第1レグのバログラフを見ると、FL185でのスタート後、第1レグの半分よりやや先(那須岳の辺り)までウェーブは弱く、GS180~220㎞/h(IASではなくて、TASにウィンドファクターが加わった対地速度)を保ち、FL150まで下がりました。
(もちろんIASで飛びますが、ウェーブフライトではGSを意識する事が重要です。ひょっとするとバックしているかも?)
那須岳の辺りから良いウェーブのエリアに入り、高度も回復させたかったのでGS100㎞/h~180㎞/hで飛び、FL184で第1旋回点をターンしました。(平均速度180.73㎞/h)
fig6
第1レグ(赤)は、ほぼコースに沿って飛行し、グライダーシンボルの所まではウェーブが弱く、速度を抜かず、高度を下げた。(バログラフの赤縦線まで)
那須岳辺りより北ではウェーブが強くなり、速度を抜き、高度を回復させて第1旋回点をターンした。(バログラフの青縦破線は、各旋回点を示す)
第2レグは、基本的には第1レグと同じ第1波のウェーブを戻りますが、どこかで第1波から離れて第2旋回点へ向かわなくてはなりません。どの様にコース取りをするかが重要なポイントです。ローター雲の分布を読み、ウェーブの良さそうなラインをGS150~200㎞/hで飛び、大きな高度の損失は無く、第2旋回点をFL169で通過しました。
第2レグの場所は、良いウェーブが発生している那須岳の北側となる事に加えて、第2旋回点は第1旋回点より風下側になります。更に、速度を抜いて高度を稼ぐのに値する強いウェーブは無く、減速せず、平均速度は185.55㎞/hとなりました。

第3レグでは、高度をFL155(FL185-30)以上にしないとゴールできません。しかし、ウェーブが弱いコースの南半分になる為、速度のキープと高度のキープを同時に行うのは不可能でした。ローターの分布をにらみ、風上の第1波に戻る為に沈下の弱い所を選び、少しゴールから離れる様なコースを飛び、向かい風の沈下帯ではGS180~220㎞/hを維持してFL119まで下がり、第1波に戻りました。
  fig7
第2レグ(緑)は、ローター雲を見ながらウェーブの良さそうなコース取りを行い、速度を抜かず飛んだが、第2旋回点までのコース取りに無駄が多く、旋回点を左回りで通過したのは失敗。この飛び方では時間のロスが多く、平均速度が低下してしまう。
第3レグ(水色)は、やはりローター雲を見ながら、沈下の少ないコースを選んだが、ゴールから離れてしまうコース取りは、タイムロスが大きくなる。本来のコースから30度以内の変針であれば、そう大きなロスにはならない。しかし沈下帯は避けたいし、コース取りに悩む。第3レグ途中から平均速度は諦め、2回目のスタートに備えて、減速して高度の回復を行った。

高度をFL155に上げる為、日留賀岳辺りでは減速して8の字飛行をせざるを得ませんでした。暗算でも平均速度は遅く、アジア大陸記録最低速度の140㎞/hには程遠いと思いました。仕方が無く、2回目のスタート高度を上げる為に更に減速してFL166でゴールした為、第3レグは46.98㎞/hでした。この結果1回目のトライでは、105.1㎞△を1:02:34で飛行し、平均速度100.8㎞/hでした。平均速度は出せませんでしたが、FAI100㎞△コースを飛んだので、JSC100K△賞を申請できます。
S女さん、ワイン1本頂けるかな?

2回目のトライでは、FL169 でスタートし、第1旋回点を約18分後にFL163で通過し、平均速度153.7㎞/hでした。1回目と同様に、第1レグ前半のウェーブは弱く、後半の北側のウェーブはまあまあ強いウェーブでした。しかしコース南半分のローター雲の様子を見ると奇麗には並んでなく、弱そうに見え、第2旋回点には行かずに帰投する事にしました。
  fig8
2回目の100㎞△コーストライ トラックの色はV/Sを表示している。


4.角田滑空場からの500㎞ダイヤモンド章フライト
fig9
fig10
K原さんのDiscus bT(SS)とArcus T(AT)の航跡図。
SSの宣言したタスクは3TP 527.5㎞、OLCの6レグでは744㎞飛行した。
3TPの南側旋回点2つを那須岳辺りに設定していたので、そこから南側のウェーブの弱いエリアに入ることなく折り返した。どこに旋回点(飛行コース)を設定するかが重要。
28日(土)のウェーブ予想図には、北アルプスから北関東・東北盛岡まで、ウェーブの波動が描かれていました。長野滑空場と角田滑空場からも、当然ウェーブフライトをするだろうと思っていました。
飛行中は他のグライダーの情報を聞くことはできませんでしたが、その日の夜にOLCを見て驚きました。 角田滑空場からOLCの6レグで744㎞を飛行 した方がいたのです。(宣言したタスクは3TPの527.5㎞でした。)そしてそのフライトの航跡と私の100㎞△の航跡が一部近づいていて、飛行高度も同じ様にFL200くらいでした。残念ながらそのトラフィックを視認する事はできませんでした。
また角田のブログで知りましたが、パイロットのK原さんはこの28日にダイヤモンド章の500㎞をコンプリートし、かつA章から3ダイヤまで全てを角田で飛行した最初のパイロットになりました。驚きです、素晴らしいですね! 


みなさん、こんなことをした人がいるのです。こんなことができるのです!みなさんもチャレンジしましょう!

K原さんのDiscus bT(SS)の旋回点は那須岳の東側に2つ設定されていましたが、ちょうどその旋回点を境にして、北側が強くて良いウェーブのエリアでした。つまりSSのコース設定は28日のウェーブの良いエリアから出ずに北に引き返す事ができ、その結果、平均速度を上げる事ができたと思います。 
逆に、ATの100㎞△コースは、北側半分しかウェーブの強いエリアに入っておらず、南側半分が弱いエリアとなってしまい、平均速度が遅くなりました。
飛行コースをウェーブの強いエリアに上手く設定する事が重要です。

5.W邊さんの得たものは?
W邊さんは初めてウェーブフライトを経験しました。
Arcusの様な高性能複座機の価値は、もちろんその空力性能の高さですが、それ以外にもいろいろな価値があります。その1つが、まだ経験の少ないパイロットでも、山岳飛行やウェーブフライトを経験し安全に練習できることです。W邊さんも今回のフライトでFL200の別世界を経験しました。
また、私が食事中はコントロールを担当して、ウェーブでFL200に上がりました。

W邊さんが何を経験し、何を得たのか、皆さんにW邊さんから伝えて頂こうと思います。2022WP-場外乱闘編-2 【(仮題名)5月28日(土)のウェーブフライトでW邊さんが得たものは?】をJSC MLにアップしますので、ぜひ期待して下さい。

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