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feed 苦し紛れの旋回理論 その10 (2015/10/11 10:24:12)
この連載もとうとう10回目となりましたが、まだまだ行きますよ!

今回は、最小沈下速度以下で飛ぶとハンググライダーには「アドバースヨー」がなぜ発生するかを取り上げてみます。


これは意外にみなさん御存知ないのではないでしょうか?

ハンググライダーは最小沈下速度以下で飛ぶとアドバースヨーが発生します。

アドバースヨーとは、旋回しようと旋回方向に体重移動すると、旋回したい方とは逆側、つまり、旋回外側の方に機種を向けてしまう厄介な現象です。



もっとも、この現象は昔のただセールを張りまくるだけの作り方をしていた時代のハンググライダーで問題になっていたものです。

現在のハンググライダーでは露骨にはこの現象は発生せず、旋回しようと体重移動したとき実際に旋回に入るまでタイムロスはあり、このタイムロスがアドバースヨーの名残であると言えます。

しかし…。

現在のハンググライダーでもはっきりしたアドバースヨーは体験できます。

それは、機速を落とし続け最小沈下速度以下になったとき、はっきりしたアドバースヨーを体験することができるのです。

普段はまずそこまで機速を落とすこともなく、また、最小沈下速度以下の速度を維持するにはそれなりの技量が必要なため、あまり知られていないのだと思います。



さて、それではなぜハンググライダーは最小沈下速度以下で飛ぶとアドバースヨーが出てくるのか…。

この理由が今までの理論だとどうしても説明が出来なかったんですが…。

例によって…。

これも新説「ビロー失速説」を使うと、これまた簡単に説明出来てしまうんです…。


それはどういうことかというと…。


この連載の第3回目に、ビロー失速説を使ったハンググライダーの旋回プロセスを説明しているんですが、それをもう一度思い出してください。

第3回目では、ハンググライダーはビロー失速の効果により、強い風見鶏効果を持つことができ、その結果旋回に入れると申しました。





しかし、上図のように旋回に都合の良いようにビロー失速が発生するのって、実は決められた速度の範囲なんです…。

例えば、ひたすらハンググライダーの飛行速度を落とし続ければ…。



翼は失速状態に入り始めるわけであり…。

上に述べた「ビロー失速の効果により、強い風見鶏効果を持つことができ…。」というのは、あくまで翼に部分的な失速現象が都合よく現れてこそ実現する効果であるわけであり…。

翼に発生する失速範囲が大きくなってしまうと、もはや風見鶏効果を生む「部分失速」も発生できなくなる…。

だからアドバースヨーが発生するのではないか…。

「ビロー失速説」を使うとこのように簡単に説明できてしまうんです…。


この連載の第三回目で、本当ならばビローシフトにより旋回外側の翼の抵抗が大きくなること、さらに、重心位置の移動により重心位置を基準に考えた場合の旋回外側の翼の割合が増えることの二つの効果により、ハンググライダーはアドバースヨー

の動きに入りたがる…。

しかし…。

それを「ビロー失速が抑える」と、述べさせていただきました。

そのビロー失速の効果が薄れてしまうのです!

だから最小沈下速度以下で飛び、翼の失速範囲が大きくなると「アドバースヨー」が発生する。

そういう考え方もできると思うのです…。



ちなみに…。

この考えで行くと、翼に部分的な失速すら発生しないような超高速でも、失速そのものが発生しないのですから、もしビロー失速説が正しいのであれば、最小沈下速度以下での飛行と同じようにアドバースヨーが同じように発生す

るのではないか?という考えもできます。

例えば…。

大会でゴール目前でベースバーを思いっきり引き込んでカッとんでいるときなど…。

こんな時のハンググライダーの動きを細かく見てみると、実は大変操縦が難しい状態に入っていると言えます。

しかし、これだけ早いスピードになると、実際は後退角の効果が速度増加で効いてきて、ある程度はアドバースヨーを抑えてくれているようにも思えます。

これはグライダーやパイロットの体重によっても効果の現れ方がまちまちで、一概にはどのような動きになるかなんて、経験上言えないようにも思えますが、いろいろな効果が重なり合って複雑な動きになるのは確かです…。






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