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feed コロンビアでのクロスバー破損事故のレポート (2013/9/2 10:12:28)
Aeros Combat アクシデントレポート

アクシデントの概要

Combat 09 GT 14.2、シリアル番号025.12Pで通常の飛行中に、明らかにクロスバーの破損を原因とする事故が発生した。事故当時の飛行状況は、水平速度66.7km/h、沈下速度-1.8m/s、風速は約8.4km/hであった。VGを75%ほど引いて直線飛行中(図1を参照)に事故は発生した。フライトデータはパイロットが使用していたFlytec6030から回収した。パイロットの報告によると、ピキピキというクラック音が聞こえた直後に、左方向のスピンに入ったということである。

この時の対地高度は600m。直線飛行に戻そうと右のアップライトを引いたが効かなかった。機体は一見、どこもおかしくはないように見えた。パラシュートを開傘し、トラックログによると75秒後に地上に達した。下を向いて落ちようとする機体と懸命に戦い、わざとタンブルさせた。ゆっくりと背中から落ちたが、その前にキールが接地した。キールはワイヤーの付け根付近で折れ、左のアップライトが折れたが、損傷はこれだけだった。セール、バテン、リーディングエッジ、スプログ、ウィングレットは無事だった。折れた片側のクロスバー(左)が、事故の原因と思われた。

図1:フライトの軌跡を示す白線と、ランディング場で撮影した機体
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事故現場で撮影された写真では、左のクロスバーが翼端側から50cmのところで破損しており(図2)、後から前への屈曲力と、その結果としてのねじり変形によって材料が破損したことが示唆される。
その後クロスバーをさらに分析し、図3に示す亀裂が見つかった。

図2 事故現場で撮影した、破損したクロスバー
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図3 クロスバー上の亀裂
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構造破壊分析
左のクロスバーには、翼端側から40cmと50cmの部分に、横断面方向の亀裂が2か所見られる。
図4~図12は、クロスバーの破損部分を4面全てから撮影した写真である。この破損状況から、後面においては圧縮と剪断による構造破壊が生じており、前面と亀裂の伝播した面では、カーボンの2層に一部に層状剥離が見られる。前面に過剰な張力と剪断力が作用し、さらに、層と層の間の粘着力が弱かったことが原因と考えられる。
破壊の発端となった横断方向の2か所の破壊箇所の間に生じた、破壊の伝播(縦断方向への伝播)による亀裂(図10~図12)は、破壊中の屈曲力の結果として生じた。

破損面4の拡大写真(図8、図9)からは、クロスバー端部から50cmと53cmの間に気泡が生じていることがわかる。気泡が生じた原因は、積層工程においてカーボン繊維の間に樹脂が浸透しきっていなかったためと考えられる。気泡は、積層工程において、積層面への樹脂の移行がおそらく不十分であったことの、外観上の証拠といえる。樹脂の浸透不十分による同様の気泡が、クロスバーの他の部分にも見られる(図13)。複合材料において、樹脂は圧縮力を支える主成分であり、樹脂の不足は圧縮・剪断力に対する部材の強度を弱めることになる。今回破損したクロスバーに対するより詳細で徹底的な研究を、破損部分の複合材料の特性も含めて実施することを強く推奨する。

図4 クロスバーの破損部分、後面から撮影。横断方向の損傷と、大きな亀裂の間の破壊の伝播
図5 後面
図6 クロスバー底面から見た構造破壊部分
図7 前面から見た構造破壊部分
図8 上面から見た構造破壊部分
図10 キール方向に進む、縦断方向への破壊の伝播
図11 キール方向に進む、縦断方向への破壊の伝播
図12 キール方向に進む、縦断方向への破壊の伝播。X印は亀裂の終了点
図13 カーボン表層に見られた気泡

Andres Hernandez
博士(システム制御と診断)
ハンググライダー・インストラクター


注:この報告書の目的は、エアロスがこのアクシデントを解明し、考えられる原因を特定、パイロットの安全を確保するために必要な対策を決定するのを助けるために、できるだけ多くの情報を提供するためのものである。エアロスが必要とするならば、さらに詳細な情報を提供することもできる。

注) Aeros社の見解
ただし、このレポートには、クロスバーの構造破壊の原因について、
誤った結論が含まれているので注意して下さい。、

当社では、クロスバー破壊の真の原因を、
通常は滅多に起こらない製造上の欠陥、つまり製造工程でクロスバーの母材に
圧力をかける際に、カーボン繊維層がずれたことと断定しました。
これにより、クロスバーの壁面に沿って、構造の弱い線が形成されてしまう
ことがあり得ます。

損傷したクロスバーでは、まさにこれが起こっていました。。
クロスバー全体に沿って、カーボンクロスがほとんど付いていない細い線が
あり、一方でカーボンクロスが多すぎる部分がありました。

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