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非常に悩む仕事…。 (2024/11/21 8:30:41)
私の仕事は、スカイスポーツ系のギア、つまり、機材のデザインや製造などです。
修理なんかも行っており、特にハンググライダーのセールの修理は、ほぼほぼ日本でウチだけしか行っていません。
…。で、今回ちょっと困った仕事が来ました…。
その困っている仕事というのが、コイツ↓のセールの修理です。
ドイツのA.I.R社が作る、固定翼ハンググライダーATOS VRです。
ハンググライダーは、主に使用されている機体は2クラスあり、一つは今までのアルミパイプのフレームを使用した物。
もう一つは、この固定翼と言われる、カーボンファイバーを使用した飛行機と同じ構造を持つものです。
で、困っている内容がコレ↓
前側の上面が、横方向に結構広く裂けてしまっているんです。
「そんなのあて布をあてて、縫ってしまえばいいじゃん!」
そんな声が聞こえてきそうですが…。
実はそのように、横方向に長くあて布をあてると、必ず飛行特性がおかしくなるんです!
下の図を見てください。
その理由を分かりやすく書いたものですが…。
上図のように、前側の上面って、翼にとって非常にデリケートな場所になるんです!
あて布となるセールクロスの厚みは0.2ミリほど
それを縫う糸の径もだいたい同じ0.2ミリほどです。
わずかな厚みと思われるかもしれませんが、このわずかな厚みが、この部分では空気の流れを確実に乱してしまうんで
す!
随分神経質だな!と思われる方もいるかもしれませんが、これ、決して神経質な話じゃないんです!
以前同様な破れ方をしたセールを、横長にセールクロスをあてて修理したところ、明らかに飛行特性が変わり、特に失速
が間違いなく早く変化してしまったんです!
その経験をしてからは、なるべく空気の乱れが少なくなる形に修理を行ってきたのですが…。
今回のは、かなり広い範囲で横方向に長く破れており、しかも、修理がかなり困難な場所でもあります。
いろいろと考えて、今回出した妥協案は…。
リペアテープ(補修用の粘着剤付きセールクロス)を併用した修理です。
強度の必要な個所は、縫いで補修し、その面積も出来るだけ少なくなるように工夫する。
そして、強度的に大丈夫なところはリペアテープで補修する。
そういうものです。
場合によっては、縫いで補修したところも、出来るだけ凸が無くなるように、その上から薄い粘着テープを張る必要があ
るかもしれません。
航空力学の教科書では、やはり今回の破損個所にあたる場所の凹凸は、確かに繊細であるとちゃんと書いてあるのです
が…。
いざ実際に自分がそれを経験してみると、「これほど違うの!」と驚いてしまうんですね!
大昔の飛行機は、主翼の表面に丸い頭をしたリベットを打ち付けていたそうですが…。
これだと理論どうりの効率にならないということが分かり、沈頭鋲というでっぱりのないものが使われるようになりまし
た。
何も知らなかった昔は、「随分こだわるんだな…。」そう思ったのですが…。
いろいろ経験した今では…。
確かにそれじゃ飛ばないわ!
そう納得させられてしまいます…。